J’aime le théâtre♡

観劇日記。

PARCO『新ハムレット』

うーん、これはあれだな、たぶん、戯曲と言うか本の台詞が相当手強いんだな。集中力を保つのがなかなか難しかった。それを何とかコミカルな芝居で面白く観せようとしてるところがまたちょっと苦しくてね。ラップなんかも工夫のひとつではあるんだけれども。

本家シェイクスピアと異なる展開は面白かった。

平田満さんのクローヂヤスが圧倒的に理知的な大人でね。大変な人生を必死に生きてることに共感を誘う。謙虚で柔らかくて"いい人"に見えて、この人は悪事をしてないだろうとかウッカリ思っちゃったもんな。戦争を始めていろいろうやむやにするのか…怖い怖い😨

ハムレットくんはもうホントどーしよーもない愛してほしいかまってちゃんだよなー。苦しい!かわいそう!って連呼してて、ラストだって死にきれない自傷行為。あぁまさに太宰なのね。

クローヂヤスとポローニヤスの対峙はリアルな重みがあったし、ガーツルードが小川に身を投げたのは妙に納得できてしまった。ハムレットとオフヰリアが愛=言葉かどうかって語ってたのもそうだけど、日本人が共感できるハムレットとかいうコピーはそういうことか。クローヂヤスとポローニヤスは我々がサンプルをたくさん知ってる日本人男性の感じなんだな。

せっかく面白い筋だから、上演台本もっと思い切って書き直しちゃえば良かったのに。

美術はデカいスロープとか柱とか綺麗だったけどね。赤い球が落ちてくるのはなんか中途半端だったな。戦争が始まったシーンは怖かった。

演出は五戸さんだったんだけどね。ここまで大きい舞台で観たの初めてだったから、ちょっと持て余し感を感じてしまったかな。

 

え、太宰の小説めっちゃ面白いじゃん。一度観たからかもしれないけどグイグイ入ってくるし、うわぁ日本だぁ!日本人たちだぁ!って実感を伴って思う。人物の行動原理が原作よりもよく理解できちゃう。

"あの噂"っていうのが先王の亡霊の件なのかオフィーリアの件なのか勘違いだけでなくハムレットの頭の中でも曖昧な感じで会話が進んでいくのとか、日本的だなーと思った。

これだけの文章を台詞として聴いて受け取るのはやっぱ難しかったよな。あくまで小説であって戯曲の言葉ではないってことかなぁ。各シーンの終わりがプツッと切れて感じられたのもそのせいかも?

ラビットホールみたいな超絶現代口語で観たら面白そう!

この小説、19417月刊行太平洋戦争勃発前夜だったんだね。そう言えば劇のプロローグにもなってた「はしがき」に何の政治的意図もないとかって、わざと書いてあったけどね。

 

あ、オフヰリアとガーツルードのシーンで、先王が亡くなった日にオフヰリアは新調の赤いドレスを着てたけどそれが緑に見えたってどういう意味なんだろ?green=嫉妬と関係ある?

その話を聞いた辺りからガーツルードも急に様子が変になるんだよね

クローヂヤス、恋のために毒殺を決意したことはあるけどやってない、とか言ってたよねハムレットとの会話の中で。

 

まさに、みんな、言葉で言ってることと本心とか事実とかが合致してるのかしてないのか全然分からない。クローヂヤスとハムレットは言葉が全てだと言ったが、彼らの現実・事実・本心は言葉で語られないところにあるじゃんね。

そして、みんなそれぞれに見ている世界が違いすぎてまったく相互理解にならない。

ハムレットとオフヰリアの会話は、なんだかんだ言ってふたりでの議論自体を楽しんでいるような空気があって可愛らしかったけどね。