J’aime le théâtre♡

観劇日記。

『ジョン王』1/21ソワレ

東京前楽。私はこれでコクーン版観納め。でもまだ埼玉もあるし〜と思ってたけど、そっか光夫さんは観納めだ。

 

やっぱ冒頭光夫さんの歌で惹き込まれるわー

 

アンジェ城門前のシーンは鋼太郎フランス王とブランシュちゃんを筆頭にみんな絶好調!公演を重ねてカンパニーが熟成してるのを感じる。声が枯れてる人多かったけどねw

ルイルイが初めてブランシュという名を聞いた時に無言で唇だけ動かして復唱してるのが可愛かったよ。

 

そんな中で佐藤凌くんのアーサー、気高く振る舞いながらも、見えないとこでこっそり、すっごい嫌そうな顔する瞬間が度々あってね母に対しても!

大人たちの私利私欲に巻き込まれてしまったアーサーが憐れで、母の腕の中にだって安らぎなんて無かったであろう少年が切なくて痛ましくて、あぁコンスタンスを戦争犠牲者の母たち女性たちの代表みたいに思っちゃいけないよなーという気持ちになった。彼女は間違いなく、戦争を引き起こした側だもんな。

 

ヒューバートに仄めかす時の光夫王の荒い息が凄かった。

そのシーンの間、舞台奥にいる堀くんエセックスの、アーサーを見て微笑んだり王を訝しく見遣ったりする細かい芝居に目を惹かれた。

 

エリナーがオーストリア公の首を持ったとこで、京屋!って大向こう掛かってたね。

歌の後に拍手する人がチラホラいたり、ミュファン・歌舞伎ファン・観劇初心者などなどいろんな人が混在する客席なのはなかなか良いことじゃない?リピーターではなく初見の人の割合も高い感じするし。

 

ジョン王臨終の「月の祭り」!!!もぉ凄かった。見入ってしまって、気づいたら身体が硬直してた。乱れた前髪の隙間から刺してくる虚ろな眼光をちょうど同じ高さの真ん前で浴び、背筋が寒くなった。

私生児の報告の途中、息絶える間際に足(意外に細身で綺麗な裸足)の指がクッと広がったのも目に焼きついた。

この人、王でなければ良かったのに

ルイの進軍と母の死(=領有権の危機)を知らされた時なんて子供みたいに両手で目をこすってベソかいてたよね。

戯曲本の帯にあるとおり、ホントことごとく間違った決断しちゃうし。そういう時のイギリス諸侯たちの細かい反応というか、表情には出さないけど内心ん?て思ってる感じなのが面白い。

ルイの前での堀くん彰紀くんのいろいろ噛み締めてる表情も良かったなー。ジョン王の臨終に際しては彰紀くんの無垢な悲しみの顔が印象的だった。

 

イギリス諸侯たちの言動はホント複雑でね、我々日本人と重ねてしまうよ。そう言えば衣装もこっちが和服だもんな。

でも「古い正しさへ帰ろう」みたいなこと言ってるのは引っ掛かった。私たちはそれに同調してはいかんのではないかと。

 

私生児と言うか小栗くんと言うか、何かまたひときわ熱かったな。指揮権はお前に預けると王に言われて、王の威光ともどもあんなにも背負って。

その熱さの余韻で、幕切れの感じ方も変わった。あくまでこの国を何とかという思いなのかな、って。アホらしくなって出て行っちゃったと言うより、この劇世界で感じたことを現実で活かすために持ち帰ったのかな、と思った。

蜷川ハッチにまっすぐ消えて行く小栗くんの後ろ姿もこれで観納めなんだなって、しみじみと見送った。

小栗くんも結構声枯れてたけど、歌声はそのせいで魅力的になってたよ。

 

年末以来観ていなかった間に、私生児が2幕には赤いパーカーのままでなく着物を着た上に鎧を着けていたという変更もあったけど、特筆すべき大きな変更として、王が苛まれてマネキンがぶら下がるシーンが新たに挿入されていた。

苛まれるジョン王と、1幕終わりの狂気のコンスタンスの背後に、同じマネキンがぶら下がる演出。それによって、コンスタンスのシーンのマネキンたちも彼女にのし掛かる"怨念"なのかなって思えた。

"戦争責任"という言葉も浮かんだ。

コンスタンス我が子を失った悲しみも勿論あるけど、アーサーを死に至らせてしまった自責の念、戦争を引き起こし人々のうちに多くの悲しみを招いてしまったことへの自責も重なって、そりゃもう狂いますわな。いや、狂うには我が子を喪うだけでも充分だけどさ。

 

コンスタンスの玲央さん、水色の大きな石の指輪をつけた手指がとても美しかった。パニエから覗く白いブーツ可愛い。狂気の叫びの合間に時々可愛らしい声になるのが悲痛だったなぁ。

 

戯曲の注釈をチラ見してなるほどなーと思ったけど、これはシェイクスピアの時代に上演された時もやっぱり、"自国の現状と明日"について思う芝居だったんだ。

観客の中には一山当てるためにロンドンに出てきた非嫡男たちが一定数いて、私生児に境遇を重ねて観ていたらしいし。

そう言えばアーサーが「鉄の時代」とかも言ってたな。

戯曲は埼玉までに注釈含めてじっくり読んでみよう。

 

1/22 なんと東京千穐楽が直前の中止。役者さんたちのツイートなどから察するに、本当にギリギリの決定だったみたい。私が観た回が結果的にコクーン楽になってしまった。