先日息子がU-18(なんと¥0!)で観せていただきましたのでね。面白かったと言ってたから私も観に行った。
人には欲望がある、それを満たすための行動を描くとつまり物語になる。すげぇカッコイイ柿丸美智恵さん演じる人気美談作家・三好の指導内容(プロットみたいな話や、主役っぽいとかモブキャラとかも言ってたな)など聞いてると、まるでベテラン演劇人だ。すぐ後ろの席に渡辺えりさんが居て声出して笑ったりしてたから余計にそう見えちゃったよw「本当のデッドがある」とか話してた時もえりさん笑ってた。劇作家あるあるなのかなー。
人間の、三大欲求に匹敵する根源的な欲求は "自分の生に意味を持たせたい"ということだって。だよなー!そうだよなー!
そして、なるほど「この世でいちばん下らない美談」は、戦争で一兵士としてお国のために死ぬこと。三好の依頼によって書き始めたものではあったが、宗輔が目の前の選択を積み重ねた結果がそれを導いてしまっていることは確かだ😨
あれよあれよという間にいつの間にか二二六事件からの軍事政権みたいなことになり、犬養首相の「話せばわかる」とかにはクスッと笑ったりもしたけど、シンプルで短い美談=赤紙を喜んで買い求める人々、貧しい者が更に貧しい者から搾取していく様、そんな光景にだんだん笑えなくなって、三好が「よく書いたわね!これよ!くだらない美談!無意味な死!」と高笑いするところまで…
そこへ至る道筋は破綻のないストーリーだ。そう思えてしまうのが恐ろしい😨
ラスト、そこらじゅうに転がっている名もなき遺体のひとつに宗輔は近寄り、よく見て、前歯に金歯が2本とか親指に太い指輪とかうなじにホクロとか細かい特徴を見つけ、万年筆で紙に書き留めていく。書き留めた一言一言から、その人の人生が想像できる。その宗輔の行動が尊いと思った。作家という仕事は尊いなと思った。演劇とか芸術っていうのはこの行為のことなのかな、と。
あのね、『エリザベート』を最初はルキーニ目線で見てたと思ったらいつしかトートやシシィの物語が見えてきちゃって…という感覚を思い出したんだよね。
割とよくあるのよ…だいたいまず気になるのは全体の構成とかそれこそ三好が言ってた"うねり"の様子とかで、複数回観てるとだんだん登場人物に寄り添った感じ方になること。
それに、"無かったことになりたくない"問題は、結構ずっと考えてきてる。
あ、あのゴミ山のようなセットで表された近未来の世界は、書物が打ち捨てられた世界、コトバが粗末にされてしまっている世界なのか。語られる言葉に真実なんて無い。報道にも"号外"にも。
いや、しかし一方で、でっち上げられた美談が"真実"になってしまうというのは、コトバが現実を作ってしまう、コトバが途轍もない力を持つことも示しているよな。
TA-netの田中結夏さんが妹のマル役としての出演&手話通訳をしていて、こないだオンライン講座で話してた米内山さんが手話監修。うわぁこれも何かの御縁だなぁと思ったのも観に行く動機になったんだけどね。
マルはそこに実在しているようにもしていないようにも思える。実は宗輔が作り出してた存在だったのかな?とか。巾着の中にお金のつもりで "平たい石"を持ってたのと同じで。
物語のちょっと外から見てる人…コロスみたいな感じにも見えるんだよね。顔の表情がふと目に入ってきた時に、それがなんだか私たち観客と同じ目線に思えたりして。
決して、舞台の完全に外に立ってる通訳さんではなかったし、違和感を誘う存在では全くなかった。こういう作り方ができるんだね。面白いね。
U-18もそうだけど、いろんな人に届けたいという作り手の意図が感じられるね。
"無かったことになりたくない"と思うことについては折に触れて考えてきてるし、"宇宙"とか"ちっぽけな自分(人間)"というイメージに繋がった作品が印象深く記憶に残っていたりする。わりと前から。
そうね、そう言えば舞台を観ることに惹かれた最初って"生身の存在のパワー"だったな。それに惹かれたのは、大きなものに抗って立っていることを無意識に感じ取っていたのかもしれない。「強靭な心」はマジずっと言ってるしな。
あと、I wanna be special to youという関係性によく惹かれてるような気がするけど、これって"無かったことになりたくない"の発露と言えるよねー。