さい芸千穐楽で観納めた後とても強く残っている余韻が、あゝこれ…まさに「殺傷能力は無いけどトラウマを残す爆弾」だったなぁ…と。
楽日にして初めて正面席で浴びたせいもあるのか、ある者が外の世界について夢見がちに語るのを遮ったクマちゃんの強く甲高い声「そんな世界はどこにもない!」がやたらと耳に残っていて。
ある者がキラキラした顔で "いかにも" な美しい世界を思い描くのを見て、大杉栄とかあの辺りの人たちを連想してしまったり。
ある者は、安全な場所なんて無いぞと世間に思い知らせる目的でこのクマちゃん爆弾を作ったらしい。
殺傷能力は無いけどトラウマを残すクマちゃん爆弾…
え?これってもしかして演劇とか芸術のことじゃないの?まさにこの作品のことじゃない!?と、さい芸からの帰り途にふと思い至ってしまった。
楽しくて面白かったけど、何やら怖さ・薄ら寒さを残す。棘が刺さったみたいに、小骨が引っ掛かったみたいに残ってる。
演劇人・芸術家って、我々観客の "平穏な" 日常を揺るがす、誤解を恐れずに言うなら "テロリスト" だ。疑いましょうよ、一旦壊してみましょうよ、と投げ掛けてくるもんね。
クマちゃん爆弾で子どもたちが失明したり指を失ったりしたのは模倣犯の仕業。同化効果だけに終始するようなまがいもののゲイジュツは実害を引き起こす可能性もあるということも示唆しているのではないかな。
安全な劇場なんて!と成河さんもよく言ってるよな…
そうそう「脱構築」ね…
などと、頭の中でいろんな思考が繋がってくるような気がしているけど、あら?これって果たして私自身の思考なのかな?と疑わしく思われてくる。
だって、恥ずかしながら明らかに成河さんのコトバにはだいぶ影響されてますからね。
ファンじゃんね。信奉者とかではないって言い切れますかね。内容わからないけどこの人が出てるなら間違いないとか言って数ヶ月も先の○千円のチケットをホイホイ複数枚買ったりするんだよ?w
やっぱりここグッサリ刺さっちゃうなぁ。
ある者が出会った人に次々と影響されていく様子も、実は結構身につまされるから観ていてちょっと気まずい。
自分の頭で考えてると思ってるけど、所詮は推しの語る言葉や過去に観た作品の中のアイデアをなぞっているだけかもしれないぞ?それは他人の思考じゃないのか?
でも、いやいや、芝居や言葉に触れて私が受け取っていることは私のもの、それは私の思考すなわち私なのかな、とも思うけど。
私とか個とか言うけどそもそもそれ何よ?と思えてくる。「そも私とは何じゃいな?」だね!ややこしやーw 「すべての同一性は仮固定だ」と言ってたのはドゥルーズだったっけ?(こんなふうに参照できる知識の蓄えはまぁまぁあるんだよな)
ある者にとって確かなのはカラダがここにあるということだけで、「身体だけが僕の味方なんで」と言ってたけど、この作品を観ていてすごく、身体って "容れ物" なんだなという気がしてきた。
わ!身体…カラダ…空だ…!?
こんなことを考えてる流れで、今度さい芸でやる『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』って興味深すぎてチケット取らずにはいられなかった。しかもこれ岡田利規さん作演…来年のキノカブの予習にもなるじゃん♪ってまたファン思考御免。
土井さんは "ある者の中身だった者" なんじゃないかなと考えているんだけど(id イド?)、
大風の中である者と土井さんが互いに手を取り合うあのラストを、俳優(俳優のカラダという容れ物)とその中身(それは観客が受け取ったものイコール観客であるとも言える)なんていうふうに見るのは妄想が過ぎるかしら。
でもあまりにフッと暗転してしまう幕切れには、出て行った彼らが幸せになったとか正しかったとか決して思えないよね。やっぱり間違っていたからダメになっちゃったかもしれない、生きていけなかったかもしれない、という気もするから、安易なハッピーエンドじゃなくて大変よろしいと思う。
7/21に『2020』を配信で視た今だと、ある者と土井さんは融合して「肉の海」になってしまったようにも思える。こうやってどんどん肉の海が拡がっていく、その一端を見たような。「肉の海」という表現は「スープ」と言ってたのと繋がるよねぇ。
ところで、ファンとして(開き直りw)考えちゃうけど…
「そんな世界はどこにもない!」とかさ、江口に影響されちゃった時の「大丈夫✨」とかさ、成河さんが演技でそういう力強さを出す時ってやっぱグワッと惹かれてしまうよね。義経とかマイヤーズとか、やっぱそんな成河が大好きじゃん?
「みんな大好きこんな成河」とか「(同)カッキー」とかあると思うけど、もしかしたら俳優は自分のカラダにそういうのを "入れさせられてる" 感じがしちゃったりするんだろうか。堕ちてボロボロになってくカッキーたまらん😍とか言っていつもゴメンネと思ったりしてるけどw
ともあれ、余韻を長く味わえる作品は佳きですわ!