J’aime le théâtre♡

観劇日記。

木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』

2/2初日㊗️

 

わぁ…アンドロイドがえんげきをやってるのかな?と思ったよ。『日本文学盛衰史』で言ってたみたいな、もう誰も演劇を観なくなった・やらなくなった果てに機械がやってるのかなって。

無機的な台詞回し、表情も抑えめ、ずっと通奏してるシンセの音(生演奏!)、下北の古着屋テイストって感じ?な衣装。

廃屋(窓の外に立入禁止テープ貼ってあった)…あぁそっか、廃墟となった劇場なのかもしれないな。衣装やら小道具やら持参して勝手に集まった彼らが劇を始める。新国立の五戸さんの『どん底』を思い出した。

 

チェルフィッチュみの強い?板橋優里さん安部萌さん石倉来輝くんの佇まい、動き、台詞の言い方、なんかすごい中毒性がある!

板橋さんはやっぱりそうだよね!『三月の5日間リクリエーション』の冒頭の彼女。石倉くんもあれに出てた人だ。

 

谷やんさんも面白かったなー。でもね、変な言い方だけど声がとても立派でね…成河さんとか足立さんもそうなんだけど、無機質感とか脱力感とかという点で、板橋さんたちには到底敵わないのよ。あの3人はなんか次元が違うんだよね。この空気がホームという感じの3人と、この空気をわりと一所懸命作ってるように見える他の俳優たち。

あぁ、普段の自分の喋り方から離れるという意味において、この無機質感を作ること・歌舞伎の台詞回しをやることは、もしかして作業としては同じなんじゃない?

成河さんたち、いつものような芝居にならないようにがんばってる、って感じするよな。敢えてずらしてる、みたいな。

なんだろうスピード感は歌舞伎の台詞のままなのかも?それを、歌舞伎のような抑揚をつけずに発話してるとか?

 

言葉と連動しない身体。

身体の厄介さ。

 

成河さんもだけど、武谷さんとか足立さんとか石倉くんがニヤニヤしながら周りで見てるのがたまらん楽しい。ヘンテコな屋号の大向こうとかしちゃってね!足立さんスガキヤって名古屋ご出身なのかな?と思ったら静岡だった。成河さんはなんでいなげやなんだろw静河さんの紅屋はカッコいいけど、谷やんのブルガリ屋とか板橋さん?のポメラニ屋とか石倉くんのシルバニ屋は笑っちゃう。武谷さんがダルメシ屋だっけ?長浦よかったなー。

 

ラスト、赤子も権助も殺した桜姫は都鳥も投げ捨てて、後ろに立ってる安部さんがハレルヤ!(ハレル屋?)って言って幕。おしゃれ。

プルカレーテのを観た時、桜姫は運命から逃れたのか逃れられなかったのか、どっちなのかなーと思ってたんだよね。都鳥は放り投げたけどあの甲冑のおっさんがそれをキャッチして、世界は賑々しく回ってたからな。

今日の桜姫は完全に運命を捨てて晴れやかに孤独に立っていた。"白菊の世界から逃れ出て吉田の姫の世界に返り咲いた"のではなく、いろいろと理不尽な社会のシステムそのものにクソ喰らえ!のハレルヤね。

 

小雛の出てくる場は興味深かったよ。三囲の場にバッチリ繋がったし、これまたひでぇ話だった。

爆笑した1ヶ所はここでだっけ?お十さんのところだっけ?「常軌を逸してるよ歌舞伎!」とか言ってた。うわーい言ってくれちゃったね!wって感じ。その後何回か観客へ向けて言う台詞(「で、誰が犠牲になると思います?」とか)があったけど、敢えてさっきの1ヶ所だけにしといてくれた方が良かった気もするなー。

 

後ろに字幕でシーンの説明が出てて、しかもそれ"今からこれをやります"っていう体で、結末ネタバレまで含めて言っちゃうのよね(チェルフィッチュ的?)。これがまたすごく端的で身も蓋もないような言い方だったりもするから、だんだん面白くなってきてしまって。見物エリアにいた石倉くんがその字幕見てうわーマジかよみたいな顔してた時もあってウケた。

 

その字幕のおかげもあるし、岡田さんの手で "翻訳"された台詞のおかげもあるし、お話はものすっごくわかりやすかったよ。"つまりこういうことよ"っていうのを淡々と積み上げていく感じで、あれ?実は私って物事の理解というか処理の仕方が通常これくらいの感じなんじゃないかな、なんか意外と心地よかったんだよね。負担にならないって言うか。あんま感動とかしなくていいからかな。

また次回あの不思議空間に身を置きに行くことが楽しみだよ♪