J’aime le théâtre♡

観劇日記。

六月大歌舞伎『桜姫東文章』

下の巻になってくると俄然「演劇」として観ちゃうなー。

四月はもっと奇天烈とか耽美とか「仁左さま玉さま!」とかを単純に楽しんでたと思うんだけど、今日は何だろう気づいたら桜姫の心情や葛藤に近付いていこうとしてたかも。特に前半は舞台もずっと暗くてスペクタクルな要素はあまり無いし、見栄を切って拍手!みたいなタイミングも殆ど無く、なんて言うか「芝居」を観る雰囲気だったなーという気がする。

やっぱ終盤の展開にはグハァてなるよ。私ったら "桜姫が阿佐スパだったりプルカレーテだったりするものだから、逃れられない「世界」について考えちゃうし、プルカレーテのラストの呆気なさ!からの大団円!ていう衝撃を思い出しちゃったり。

こないだ観た吉三もそうだしギリシャ悲劇にもよくある「因縁」とか「運命」「宿命」の話、そこから逃れられないっていう話は、どうも最近引っ掛かってるからさ。


大団円と言えば、歌舞伎のラストはああなるのね。あんなちょっとだけのために時間取って場転と衣装替えと軍助(お十さんは軍助の妹なんだね)登場と。松若の千之助くんがコロナ陽性で休演のため演出変更してるらしいけどあの場ほんとはもうちょっと長いのかな?あれ実質カテコだよね仁左様は綺麗な役になって。最後に皆さんで座ってにざたまによる口上。


玉様が魅力的だった!姫と女郎の行き来も鮮やかだし、権助に筵を巻かれて女郎屋へ連れて行かれる時の花道七三のとこで見せた凛々しさ?には惹かれたなぁ。髪飾りを着けると途端にキラキラするのとかすげぇ。仁左様はね、まぁ色男ですわね。お布団にざたま超絶かわゆかった💕


歌舞伎の桜姫をちゃんと履修できて良かったな。キノカブがここから何を抽出してくるかめちゃめちゃ楽しみ!(しかも岡田利規さん演出ということはめちゃくちゃ"現代口語演劇なんじゃない?言葉遣いのとことか楽しみだよねー!)


へぇ!筋書き読んだら玉三郎さんが、桜姫は「精神的負担のまるでない役」「様々なものを抱えた人たちの中にあって、ひとりだけ逸脱している」と仰っててビックリ。

ずっと受け身だった桜姫が段々活躍してくるとか本心が少しずつ垣間見えてくるとか「姫としての人生がひたひたと近寄ってくる大人になっていく」とかは、そうねそうねと思って読んでたけど、そうか姫はそこに葛藤を持たなかったのかあんなに想った権助や我が子を殺してもっていうのがね。(プルカレーテすげぇなえ〜でも自害しようとしてたじゃん偉い人に認められて許されたらそれで良いのか。自害しようと思ったのも個人的な罪の意識とかじゃなくお家に罪人(ざいにん)が居てはいけないという発想だったのかな。

白菊の宿命(そう言えば権助は清玄の実の弟なんだってだから白菊の宿命として権助に惚れちゃうんだ)から逃れ出て姫の人生を取り戻すという話なんだ。都鳥なんていう巻物ひとつに翻弄されてしまう姫の宿命の虚しさとかを思うことはないんだね。その強さに観客は魅了されるのだろうか。