J’aime le théâtre♡

観劇日記。

『ザ・ドクター』

PARCO劇場『ザ・ドクター』おっっもしろかったー!!不意打ち!キャンペーンで招待券が当たったからと誘ってくれたお友達に感謝だ。


いやぁ良いキャスト揃いだったなー。全然チェックしてなかったから、そっか橋本あっちゃん!アラさとっさん(だからいのうえさんが観に来てたのか)!あれ村川絵梨ちゃん?わぁ秋人くん!おぉ益岡さん!えっ那須凛ちゃん!?という連続だった。てか演出栗山さんじゃん!(それさえノーマークw) たまにはこんな観劇もいいね♪ 良い芝居、見応えたっぷり。


でもまずなんたってホンが面白い!戯曲掲載の悲劇喜劇買ったよ。

あゝ私たちよくもこんな面倒くさい世界で生きてるわって思っちゃう、ありとあらゆる社会問題が盛り込まれてる感じ。ありとあらゆる無意識な偏見、差別、帰属グループによる分断、絶望的なわかり合えなさ、SNSやマスコミ。そんな世の中でどこに立ちどのようにふるまうか。それは自分で選び取れるものなのか。あんなにも強くて明晰で小気味良く見えてたルースも、必ずしも絶対的に正しくなんてないのだということを突きつけられ(自覚し)、崩れ落ちてズタズタになってしまった。正しさなんてどこにもない、誰かの正しさは誰かにとっての悪で。こんな世界に気づいたら、ラストのルースみたいに慟哭するしかない。


人物が白人なのか黒人なのかとか徐々に分かっていくのって日本版ならではの感覚だよねと思ってたら、これロンドンではカラーブラインドキャスティングと言うか、敢えて人物設定と俳優の属性を少しずつずらしてるんだって。それは戯曲の指示。観客はそこに違和感を覚える自分を観測するんだね。面白い!

https://twitter.com/nasurin_1012/status/1456801305968529415?s=21



結局パンフも通販で買った。ロンドン2019年初演なんだね。やっぱり"今の時代"の新しい作品がどんどん上演されるべきだと思うよ。この戯曲を立ち上げるために、演出・翻訳者・俳優たちが如何に真摯に取り組んでいるかがボリュームたっぷりの文章で読めて良かった。寄稿も良くて、中でもブレイディみかこさんが「アイデンティティ」という語の使われ方について書いてるのには確かに!と思ったわ。そう、私もこの語は「個人としての自分らしさ」を意味すると思ってるけど、昨今では「帰属グループ」を表すのに使われることが多いって。そう言われればそうかも。実際この戯曲でもその意味で使われてる。

あと、久保酎吉さんが「ストーリーを見せる芝居ではなく」と言ってたのが目に留まったんだよな。あれ?私が芝居を観て「面白い」と思う要素ってストーリーではないのかも? 「ホンが面白い!」って思うんだけど、それって「ストーリーが面白い」のとは違うか。確かに!


戯曲読むと、配役についての指示に仕掛けが込められていて本当に面白い。初演の劇場がかつてプロテスタントの一派"救世軍"の拠点として使われていた場所だというのも!

俳優はもちろん演技をするんだけどさ、見た目はどうしたって情報として作用するし、いわゆる"中の人"を透かして見ちゃったりもするもんなー。成河さんがフマで「大事なのは考えちゃいけないってことだ」って言うのを聴いて「!?」てなったこと思い出すなー☺️これも一種の"仕掛け"だったと言えるよ。

そうそう、読んで思い出したけど、ルースがすごく"言葉"にこだわりを持ってた描写ね。観劇時にも気になってた。最後にこれもサミから批判されることになるけど。栗山さんが「言葉を持つ」ということをしきりに言ってるのとも繋がるんだよなー。