J’aime le théâtre♡

観劇日記。

『Birdland』

松居さん演出(㊗️PARCO劇場)、玲央さんご出演の『Birdland9/9初日を観に行ってたけど、あまりにクズ野郎の物語だし「死」が纏わりついてる話だし決して分かりやすいホンではない上に観ててすごくメンタル削られるやつなので、あんまり深入りする気になれないでいた。

玲央さんビジュアルめっちゃ良いなー😍ってのと、抽象的なセットとか、イヴォやNTLばりの舞台上ハンディ映像演出とか、虚実の境目を曖昧にするような演出(松居さんの場内アナウンスがシームレスに劇中のアナウンスの声に移行したように感じたり、客席に照明を当てて大衆の目の役にさせられたり)などが印象に残って、役者が二役三役を演じる("大衆みたいな概念的なものを演じたりもする)のはシアトリカルで面白いねーとかは思ったけど。あと、生ピアノ劇伴カッコいいねとか。


そして今日2回目。

さすがに解像度上がって、でもこれ入り込んで観ちゃうとちょっとヤバいね。なんかすごく生々しい嫌悪感が沸き起こってしまう。これってたぶんこういう人に近づいちゃいけないという本能的な危険回避反応みたいなものかもしれない。

終演後は屋上庭園で暫し休憩が必要だった。青空が見える日で良かったよ。


ジョニー優しいなぁ

あれ?ポールって結構かわいそうかも

選択肢に怯える様子とか…(そうかこれって「あぁ、いいね」では答えられない質問たちだし、どちらかを選択しなければならないことが苦痛であったりもするような)

なんて1幕終了時点では思ってたけど、2幕の初めマーニーの両親を訪れるシーンがなんたって最悪だし、やっぱりポールを見てると精神に喰らってしまうダメージが大きい。

ほんと、まともに見ちゃうと最悪な奴すぎて嫌な気持ちになりすぎる。憐憫と嫌悪が交互に押し寄せてくる。ジョニーが優しくて優しくて優しい程、ツライ。


止めてあげようとするなんて、最後までジョニーは優しすぎる。激昂することもなく。ツアーの最後まではやり切ってあげるし。まぁ自分にとってもステージは大切なんだけど。ポールと一緒に作る音楽の世界は大切なものなんだけど。ポールに依存してることは否定できないんだけど。


死んでるってどんな感じ?と問われたマーニーの答えが、いやそれポールの現状じゃん!て思えて。

ポールって死んでるんじゃないの?生きてない。


死ぬ以外の全部を君ができるようになる時(まで生きる?)

ラストは飛び降りる寸前。結末は作者自身も明示してないってパンフに書いてあったけど、いや飛び降りるでしょ。もう飛び降りて欲しい。


何がそんなに怖かったんだポール。

ジョニーのことも怖がってるという一面があったんじゃないかな。

ステージに立ってる時だけが、彼の生きてる時間だったんだな。

ステージ直後、とても穏やかな情緒になってんのよね。(シャツの優しい色が目の色に合ってるって)

頭の中にたくさんの世間の目を飼っててツライんだけど、そんなのに打ち克つことくらいできないんだったらスタアになっちゃダメだよ。

数字を気にしたくないんだったら(ジェニーのそういうとこに惹かれてたね)囚われないでいられるくらい強くなければダメだよ。

数字、お金、お金に換算できる価値。それで計ることしか、ポールにはできなかった。それしか知らなかった。

"不確かなもの"が怖かったのかも?


全能感を見てカリギュラを連想したりしたけど、ちょっと違うかな。


ジョニーがマーニーを愛し信頼することが、ポールは怖かったのかな。そのことをジョニーも理解してたんだろうな。

ふたりの間の愛憎、凄いな。

ポールが死んでしまったら、ジョニーが苦しむことになるかしら。仮にそれを思い着いたとしたら尚更ポールは死を選ぶようにも思うけど。うん、でも、ジョニーは自分が苦しむことになることも分かってて、終わらせてあげようとしたのかもしれない。もうお前は死んだ方がいいって、私と同じようにジョニーも思ったかしら。


ポールは、共感してくれる人、自分の中に在る感覚に同意してくれる人、それを先に言語化してくれる人(ジェニーはそうだった)を、必死に求めていたのかな。

マーニーの両親に会いに行ったのは"死を身近にした人"に興味があったからなんだろうな。 ""の話が一緒にできると期待したのか。


ラストの台詞どういう意味だろう?

(He looks about him at the empty stage. )

I don’t think I am going to die soon. 

I think I’m going to live for years and years and years.

 When you can do the things that I can do. When you can see the things that I’ve seen and go to the places I’ve been to. When you can do all that you don’t die. (Sudden black.)

俺はまだ当分生きるよ、君(=死者)にも俺と同じだけのことができるんだったら。

死んだって何でもできるんだったら俺は死なない。

俺と同じだけのことが何でもできるのなら死なないよ。

もう俺には何もできないから死ぬ。

ってことか?

その前に、死んじゃうと猫も飼えない、何も持てないっていう話するじゃん?でも既に今ポールは何も持ってなくて、ずっと寒いとか感覚もすべて死者と同じなんだよね。

でも、俺が見るもの・俺が行く場所生きている俺ができること・していることを良きものだと思っている、生への執着があると取ることもできるかもしれない。

そうだね、俺と違って全能じゃない奴は死んだりするんだけど(死ぬとかクソですよねって言ってたな)俺は死なない、と取ることもできるね。


When you can do all that you don’t die.

「死ぬこと以外のすべてを」って確か言ってたと思うけど、そういう意味になるのかな?

確かに、全能なポールには死ぬこと以外のすべてのことができる。でも死ぬことというのは全能ではない凡人のする、くだらないことで。

""はクソみたいなものであり、憧れでもある。その狭間にポールはずっと囚われているのか。


英国の人気劇作家の最新作が日本で世界初演される運のよさ――『FORTUNE - otocoto | こだわりの映画エンタメサイト

劇作家サイモン・スティーヴンスが語る森田剛主演『FORTUNE | omoshii

作者サイモン・スティーヴンスについて理解の助けになる記事。とても魅力的な人だな。


ハーパー・リーガン|PARCO劇場|パルコ劇場

これも非常に興味深い。

で、え?って言うくらいこれ森フォレの話ですか?って思った。ほんと不思議なくらい。



ふとジョニーの優しさについて

「止めてやりたい」なんて、もしかして自分の黒い気持ちに蓋をして(無意識に)取り繕ってるのかもしれないなって。ジョニーのあの優しさ全て、本人も気づいてないけど自分の状況を正当化し存在に意味を持たせようとする行動だったんじゃないかなって。

そうだったら嫌だなって。



10/1 台風の中、My楽。


ポール、争いごとが嫌いなヤツだったんだな。人々が争わないための解決方法としてカネが有効であることを覚えてしまった。みんなが楽しくハッピーでいることの役に立つって信じてしまった。それを信じるしか術がなかった。

クスリ漬けにもされて、ホント哀れなヤツだと思うけど、それでもやっぱり同情より嫌悪が勝つくらいの醜悪な人間だよ。ジョニーがつかった「残酷」という語が刺さってる。ジェニーはちゃんと逃げることができて良かった。


あの時マーニーの話題はジョニーから出したんだな。ふたりで昔語りをして、親友同士の温かい空気の中で。それを感じたのはポールも同じだったんだけど、だからこそ嘘を抱えてるのが堪えられなくて言っちゃったんだけど。それだってジョニーには分かっちゃうから尚更ツラい。ポールの頭をお腹に乗っけて空を見てたジョニーの顔は凍りついてたんだろうな。見えないけどわかるよ。

止めてやりたかった、落ち着かせてやりたかった、俺が何言いたいかわかる?ってお前飛び降りて死ねって言ったんだと思うよやっぱり。でも憎しみだけじゃなく、優しさからなんだよ。だって「別々のステージに立つ」ってなんであんな苦しそうに言うの!😭

優しい人は苦しいね。ツラいね。ポールが死んだって、ジョニーはずっとそれを背負って苦しむだろう。ポールのこと嫌いになれなくて🥺

ポールにとって、ジョニーだけは特別な存在だったね。ジョニーがマーニーのことを愛してると話した時、ポールの顔は不穏だった。ポールが知らない愛なんてものをジョニーが手にする嫉妬?愛なんてものにジョニーを奪われてしまう焦燥?

最後には泣きながらごめんって言ってたね。


ピアノとのセッション素敵だった。あれはポールの頭の中にいつも流れてた音楽なんだねきっと。

全体的に、台詞の間合いや役同士の関係性の見え方がすごく進化してたなー。冒頭ジョニーとポールのシーンが格段に軽妙かつ濃密になっててオッと思った。


玲央さんやっぱ素敵だな。遠目で見るフォルムも素敵だし、スクリーンに大映しになった顔も美しい。仰向けに寝転がって空を見てる顎と喉のラインも美しい。後列だけど下手通路席で、ジョニーとポールのシーン正面だったしカテコ玲央さんの立ち位置が近くて良かった。カテコ2回目捌け際に髪をかき上げてくれた。3回目では笑顔を見れて嬉しかったな☺️


When you can do all that you don’t die.

ラストの台詞の意味また考えてるけど、

俺はずっと生きるよ。だってみんな俺みたいに何でもできたら死なないでしょ?

って言ってるのかな。

死んじゃうなんてクソ!俺と違って価値のない人間だから死んだりする。その時ポールが思い浮かべていたのはマーニーと、自分の母親のことなのかな。死んじゃうなんてクソみたいなことをして、残された人(ジョニー、ポール自身)を苦しめる。

もちろん、自分が実は全能なんかじゃないことも思っていて、俺はずっと生きるなんていうのも反語的に言ってる。

あゝポールは、"生きてていいんだよ"という理由を見つけるために必死で「価値」を求めていたのかな。


止めてやりたかった、落ち着かせてやりたかった、俺の言ってる意味わかるか?って

もう休め、死ねっていう意味だと私は観劇時に思っちゃったんだけど、そこまで言ってないかもしれないけど、でも私そう思っちゃったもんな。ジョニーはたとえ言おうと思ってはいなくてもその気持ちが漏れちゃうくらい追い詰められてておかしくなかったし、ポールだってそう受け取った可能性はあると思う。だからあの後マーニーの幻影を見たんだと。

ポールは死ぬなんてクソと思ってたけど、その裏でいつも死にたい死にたいってずっと望んでた。死んでいった人たちのことが羨ましかった。死に魅かれてた。(マーニーの両親を訪ねた時、死への興味・憧れがめっちゃ出てて、美しい日だったとか葬式のこととか話す母親の言葉に興味津々な様子で不気味だし不謹慎に見えた)

自分と違ってジョニーの眠りは深い、その寝顔を見ていたかったと、泣きながら独白してたよね。そして「ホントごめん」って言ってた。ジョニーはちゃんと生きてた。ポールは既に死者と同じだった。


でもやっぱラストのとこって、[When以下の事柄]だから俺はまだ生きる=[ ]じゃないからもう死ぬ、という構文?

君が俺と同じことできるのなら、俺は死なない。

When you can do all that you don’t die, I’m going to live long. ってことなのかな?

あ、She died a rich woman.(彼女は死んだ時は金持ちだったこの用例が参考になる?

こうであれば死んだりしないよねっていうようなことが君に何でもできるのなら、俺は死なない。ってこと?


いやいややっぱり「俺と同じことができたら、俺みたいに好きな所へ行って好きなものを見れたらその全てができたとしたら人は死なないよな」

When you can do all that, you don’t die. 

じゃないかなー。

全能な俺には、死ぬ理由なんて無い。

という反語。


あぁ、死というか"落ちていく時の感覚"にポールは魅かれていたのかな。「地球のカーブを感じられる」ってやつ。それを味わってみたいという誘惑といつも闘ってた?もしかしてポールの母親も不倫からの飛び降り自殺だったのか?もしそうだったとしたら、ポールの中では父親とジョニーが重なったりもするよねぇ。


あ、DEVILコンの感想読み返しててふと思ったけど、ポールが選択肢に怯えるとこ選択するってさ、何かを捨てることじゃん?ポールは何も捨てたくなかったのかな。全能な俺だけど、そんなのは幻想なのだという考えに苛まれる。



10/31完走おめでとうございます!

千穐楽直後のゴジチューブで松居さん結構喋ってくれてて、""の上だけがポールに認識できてる現実世界だとか、ラスト暗転してポールの足が床に着くトトンていう音まで劇なんだとか、1幕の音ぜんぶを出してる騒めきのSEや照明(客電点けるやつ)や映像演出についてとか、面白い話が聴けた。玲央さんが舞台上でどんなに巧みにピンチを救ってくれたかとかもね。今日客席からラストシーンを見てて「あ、そういうことだったのか」って分かった気がしたもう忘れちゃったけど、って、サイモンの真似して言ってたw