J’aime le théâtre♡

観劇日記。

EPOCH MAN『オーレリアンの兄妹』

うぅ早くそこから出て行って!逃げて!と思うやつだった。

みっちーと中ちゃんの兄妹、え?こんな感じなの?なんか想像してたのと違う(勝手な想像だけど)…不意打ちでキツイもの喰らっちゃった感。特にみっちーかなみっちー自身の軽やかなイメージ(それも勝手に抱いてるイメージだけど)とあまりにも違って、うぇーんオカシイよ自分のことも中ちゃんのこともこんなにも苦しめちゃってるの?っていう人物で、観ながら苦しくなっちゃった。てか、正直ちょっとうんざりな気分になった。

終盤に中ちゃんが言い放つことは全てものすごく正当で、聴いてるのが苦しいくらい正当で、めちゃくちゃ凄味もあって、ヒリッとした。扉を開け外へひとりで踏み出し始める時の逡巡と勇気が見てとれる表情。カンカンを枝で叩く御守りは携えて行ったね。ホントに役に立つのか分からないものだけどあれきっとお兄ちゃんが教えてくれたんだよね😢

開演とともに開いた壁が最後に中ちゃんが出て行った後みっちーを閉じ込めて閉まるのは良かったな。壁が閉じてる時の客席に対する圧迫感。今回もワンダーな舞台美術。ガラス窓に雨が打ちつけてるのがなんか良かった。


https://natalie.mu/stage/news/440824

あぁそうか、これまた""の話だったわ。

ちゃんと自分の脚で自分の地平に立って歩くことと、でもひとりじゃ何もできないよねっていうこととの間の葛藤を、演劇の人は特にすごく感じるんだろうな。孤独と連帯。

そうか、絆太と晃子なんだ。絆という文字が気持ち悪いよね。「おかしな家」から出て行けなかった絆太と、断ち切って光を求めて出て行った晃子。

森フォレで問われた"分岐"の両方を二人の人物で見せてくれたのね。

絆太が自身の受けた暴力を晃子に対して行使してしまうスパイラルも、そう言えば正に森フォレ。

そうだな、晃子が言い放ってくれた、私(たぶん多くの観客)が同調する"正当"が、森フォレには出てこなかったんだよね。だから、作者はその"正当"に思い至ってないんじゃないかという疑念・不安を感じてしまったんだ。

そう言えば、みっちーの創作日記とForêtsのあとがきに書いてあった創作過程は似てるところがあるな。パズル的なとことか。パズルのピースを拾い集める過程がまさに森に迷い込んでいるようで、どんな物語が出来上がるのか作者自身が想定していなかったというのも。


作劇ねとか考えてて、こんなツイートも目に留まったりした。

https://twitter.com/nshatner/status/1427479611714146345?s=21

みっちーのパンフ読んでると、やっぱお客さんが「私の物語だ」と感じてくれたら嬉しいのかなって思う。もちろん自分の中から出てきたものには違いないのでしょうけど。

このね、メイキングを知って納得する/させるってどうなのかな?と思ったりね。なんかいろんなアイディアの断片を詰め込んだなぁというふうに見える作品ってとっ散らかった印象になるけど、森フォレもオーレリアンも創作過程がパズル的だったのねと知ってあぁなるほどと思ったけど。


そうだ、中ちゃんの歌はやっぱり良かったなー。すごく自然に歌い始めた感じがしたよ。お金持ちって〜みたいな歌とかスパイスの配合の歌とか、インタビューだったかな?で言ってた、深刻な時に何故か楽しい歌をみたいな雰囲気。子守唄なんかはとても中ちゃんらしさがあるし。(あぁそう言えばその時のみっちーの抱きつき方になんかフツウじゃなさを感じたな。依存。悍ましいね、依存の連鎖。)

開演前不穏な雨風の音が聴こえてるところからいきなり大音量で荘厳なパイプオルガンの讃美歌みたいな曲が鳴って開幕したのとか、ディファイルドアヴェマリアを思い出すようなエレキギターのエレジー的な曲とか、音楽も印象的だった。


タイトルにある「オーレリアン」という言葉だけど、蝶と蛾の話は言いたいこと分かるから、それだったらレピドプテラ(鱗翅目)にしてくれた方が意味的には納得いったかも?「オーレリアンの庭」は多様な生物を許容する美しい環境のイメージだけど(あぁ多摩動物園の昆虫ユートピアを思い出した)、この物語の場合"囲われた庭は一見居心地良さそうだけどそこから出て行くべき場所だと思うんだよね。それで言うとオーレリアン"蝶愛好家は、彼らを囲って閉じ込めてる人のイメージになる。あ、それでいいのか。悍ましいオーレリアンに飼われてる兄妹ってことで。蝶の庭を作ってる人は多様性とか言ってるけどホントは蛾は嫌いなのかな。闇が深い。

『雨花のけもの』の悍ましい世界のことも思い出しちゃうね。なんかいろいろ繋がる。


https://ameblo.jp/megumi-iino/entry-12693720256.html

いいめぐさんがとても詳しく感想を載せてくれた!なるほどラストの受け取り方ね

ブログタイトルも素敵。


https://twitter.com/k_tokunaga/status/1429374866239594500?s=21

徳永京子さんの感想も興味深い。確かにね、あれ?みっちーと中ちゃんこんな感じなの?って予想外だと思ったことと関係あるかも。そうね、"軽やか"という語を徳永さんも使ってる。私がみっちーに持ってたイメージはそれだった。みっちー自身は軽やかな人だと思うの。今回、その軽やかさに至る前と言うか、当然その奥底に持っている葛藤や憤りみたいなものを曝け出して見せられたって感じかな。