J’aime le théâtre♡

観劇日記。

文学座アトリエ『文、分、異聞』

とても面白い観劇体験になったな。今ちょうど高山明 著「テアトロン」を読んでるところで、うわぁ重なるというか思い当たる節がたくさんあるじゃん!というのがまずワンダー体験だったのと、そして何より今これを観てる場所がまさに文学座アトリエその場所であるというのがね。思いっ切り入り込んでいるようでいて俯瞰しているような、自分は今どこに位置してるのか?みたいな、すごく不思議な独特な体験、それを面白いと思った。

 

話が後半ちょっと散漫になった感はあったけど。♪上を向〜いて で不意にこみあげてきちゃった辺りまでは好きだったんだけどな。

冒頭、"いかにも"な演技にうへぇと思ってたらそれは劇中劇だった!と分かった辺りの体験が面白かったな。あと、アトリエの外の風景が描写されるとこ。

 

演技なら何でもできるのかとか、身体とか、自分を俯瞰することとか。

「嘘をついてる身体がこんなにも気持ち悪い」って印象に残った台詞。

 

あぁ演劇人は自身の経験と重ねて観てるんだろうなぁ(演じてる座員の皆さんも自分のリアルと重なって感じてるとこもあるだろうなぁ)と思えてくることも面白いな。それを思ってる私は演劇界を俯瞰してるよね。

 

そう、あの研究生たちのドラマはわりとどうでもよくて、あの場所であの題材の芝居を今の若手座員たちが演っている、それをあんな感じの客たちに混じって観ている(アトリエ公演って客もわりと独特だもんね)、あの場の空気が特別で面白かったんだよな。

私にしては珍しい楽しみ方。

 

時々突然何かの芝居の台詞を言い出す感じも面白かった。劇中人物である彼らが芝居めいた言動をしたり(俳優たちだからそういうこともあるだろうというリアリティもある)、実は演技だったという設定があったり、かと思うと江守徹さんとか小川眞由美さんとか玄関の下駄箱とかのリアルと結びついたりもするし、現座員の彼らは先輩たちや座員になれなかった人を演じてどんな気がしてるんだろうと思ったりもするし、なんて言うかすごくいろんなレイヤーのものを同時に見てた、私自身も観ながらいろんなレイヤーを行き来していた、みたいな。

 

で、なんか、演劇は人生を生きるための助けになるんじゃないかな…などと、ふと思ったりした。

上演賛成なのか反対なのか立場を決めなきゃだったり劇団自体ヤバかったり切羽詰まった状況なんだけど突然フワッと虚構に飛んじゃったり故意に立ち位置を変えてみることだってやろうと思えばできるじゃん、俯瞰して笑っちゃうことだってできるじゃん、それってライフハックじゃん、所詮いろんな見方があるんだよなと思えると力が抜けるよね、みたいな。