J’aime le théâtre♡

観劇日記。

『冬のライオン』

喰えない人たちだらけの丁々発止な会話劇、面白かった。まーぁみんなよう喋る。

嘘ばっかり!本心は言葉とウラハラ!と見せながら、ん?今のは何気に本音なのか?と思わせるようなのが時々あるから観察が忙しい。あぁその言葉は本心からであってくれよと願ってしまうような期待してしまうような時もあったな。

言葉って有能であり、だからこそ厄介。

家族という関係性もマジ厄介。言外のところで分かり合えてる、通じてる、そんなふうに信じてしまいがちだから。そう言えば「わかってる」も多用されてたな。"私が実はこう思ってることをあいつはわかってることを私もわかってる"とか。


あんだけ嘘とか手のひら返しとか実はって言ってるけどホントのところはどうなの?みたいなことの連続で、最後までずっとそれで、何が本心なのかそうじゃないのか、マジでわかんないまま終わった。あらゆる言葉や態度に裏があるようにも思えてしまった。ジョンだっていつ豹変するかもとか思っちゃったよ。領土とか王権とかが絡んだ状況で個人的な欲や感情ってそんなに出るもんかねと思ったりもするし。あぁだから誰も決定打を打てないし問題解決できないのか。エレノアが時々「芝居」って言うけどそもそもこれ全部お芝居じゃんねーとか思い始めるともう何が何だか。


あぁ、私はね、やっぱり言葉を信じたいんだと思った。


パンフの小田島先生のページで関連歴史&地理のお勉強ができた。シェイクスピア史劇の時代との繋がりもね。

ヘンリー2世はプランタジネット朝の祖、リチャ2で終わるやつだ。

そっかあのジョンはやっぱり後のジョン王なのね。リチャードは獅子心王

今日の劇の舞台シノン城はフランスだし、あの人たち全員フランス人なんじゃんね。そういう時代だ。

ジョン王観たかったよぉーと、言ってみる。


蔵之介さんと高畑さんは流石。男女としての愛憎、歳をとった夫婦の空気感、武人・政治家として並び立っている感じ、互いの面目やプライド、闘い・言葉の応酬を実は楽しんでいるような雰囲気、すごくよく出ていた。

タイトルの「冬」は人生の冬つまり"老い"のことを言ってるみたいだけど、あのふたり毎年クリスマスや復活祭の度に幽閉を解いて/解かれて再会&闘いをまるで季節のイベントみたいに死ぬまで繰り返すのかしら。いつまでやるのかしら。できるのかしら。そのうち息子たちの方が強くなるよね。あらゆることが、どーにもならんのだと思う。彼ら自身の力や知恵では。いつしか、なるようになっていくんだ。それに甘んじている人たちだな、って見える。王様なのに。

連日ウクライナ情勢を見ている今、領土とか戦争とか言うのがとても現実的に感じられたりもして。ヘンリーが平和を望んでいることは本心であってくれ!人にはそういう良心があると信じたい😭と思うし、こんな痴話喧嘩が戦争になって兵や領民を巻き添えにするの勘弁してほしいよなって思う。


3人の王子たち+フランス王も其々キャラが濃くて見応えがあった。敬三さん台詞まわしがすごいカイナくんぽかったからニンマリしちゃったよ。なるほど父に屈折した愛情を持つ息子の役が続いてるってwパンフに「空鉄砲」という文字があってアガった。浅利くんとのシーンがジワジワ面白い。ジョン!て犬みたいに呼ぶのとか🤣浅利くんはあのキャラが嫌味なくできるのあっぱれだよね。自分のことジョンて言うんだよねー水田くんも何故かジワる白スーツ。和樹さんはビジュ素敵だし水田くんとのシーンにはキャッ❤️てなっちゃった。

パンフの4人対談めちゃくちゃ面白かった!


葵わかなちゃんも可憐でありながら凛として素敵だし、いやぁキャストが全員良いよね!これは素晴らしいことだよ。


1183年だっけ?日本では源平合戦の頃だなとも思った。



3/11  2回目の今日はL列下手から(下手は蔵さま和樹さん近い時が多くてお得♡)

引きで観たら、あの奥行が浅くてなんか平板だな(クリスマスツリーも薄っぺらいし)と思った舞台美術、段差も含めて、あ人形劇のセットって思った。こないだの萬斎ハムレットの劇中劇みたいなやつね。寓話っぽさを強く感じる。


1幕終わり辺りでエレノアが「1183年の野蛮人」なんて言ってたけど、これって現代目線からの客観的な台詞だよね。「愛せば世界は変えられるのに」みたいなこと言ってたな。


なんだろう、我々は本質的に、争いを生み出してしまう生き物なのだ。

愛されたいと望んでしまうし、我が子は殺せない。根本解決はできない。(子を産んでそういう中に自動的に参戦してしまうことを拒否したアレーは賢明だよね)

世界にはあらゆることがある希望以外。

死にたいうん、いずれ死ぬ。

地下牢に残り、絶望を受け容れ、微笑みながら寄り添うケダモノふたり。こんな地下牢みたいな世の中でね。強靭だね。(横濱吉三のラストじょじょさんとラサールさんが観覧車乗りに行こっかとか言いながら座ってたのと重なった)

ヘンリーとエレノアが並んで腰掛けてハァって疲れ切った深い溜息を一緒につくとこサイコーだなと思った。


多用されてたの「わかってる」じゃなくて「知ってる」だった。蔵さまと敬三さんが同じような位置(上手)で座って言ってたよね。僕を見てほしい!次男坊ジェフリー、切なかったな😢カーテン(バイユーのタペストリ)の手前で、憤然と歩くリチャードの後ろをピョンピョン追い掛けて行ったジョンから少し遅れて、ニヤニヤしながら歩いて来たと思ったらふと立ち止まりなんとも寂しい表情をするジェフリー😢

カテコでは敬三さん真正面だったしなんだか可愛らしい笑顔を見せてくれて嬉しかった。


和樹リチャード、フランス王が最初に登場したとき下手壁際に居たから、めっちゃ複雑な表情(厄介憎いでも会えて嬉しいとか?)してるのをガン見しちゃったよ😆

地下牢でのエレノアとの会話で「自然の摂理」の話が出てくるけど、これってエレノアは家族・血縁関係のことを言ってるのにリチャードは同性愛志向のことを言われた気がしてるのかな?エレノアもその含みも持たせてるのかな?エレノアは知ってたのか否か?

あと、ヘンリーは美しく優秀なリチャードをホントは傍に置きたかった、エレノアに取られて悲しかった、リチャードも父が呼んでくれさえしてたら母を振り切って行ったのに!とかすれ違いになってたの「何だよもう!」ってなるよね。ヘンリーがジョンを愛したのはきっとただの埋合わせ。ジョンも多分それは嗅ぎ取ってたよねと思うと切ない。いつも卑屈に背中を丸め物陰に行きがちなジョン。自信なんて全く無い。

逆にリチャードは、父からも母からも最大限愛されてるけどそれが自身の領土とか力とか優秀さとか美貌とかへの興味に見えちゃって仕方ないんだな。僕自身を見て!愛して!という渇望がある。スリミ彼を思い出すわ。

それにつけても相手にされないジェフリーが不憫だけど😢