2回目。
今日は何故か、初日の感触からは信じられないくらい、気づいたらモリーナとバレンティンのドラマにすごく入り込んで観てた。彼らの心の動きの波に一緒に乗っかってしまった感じ。
夢でも見なきゃ生きていけないという点でモリーナとバレンティンは同じなんだよ。モリーナは映画、バレンティンは革命。
出所したモリーナを待ち受けていた現実世界の厳しさ。舞台隅に居る収監者たちが夢見てる"壁の向こう"とは全然違う。
やべぇ、ラスト泣いてしまった。あの祝祭の光景が、私たちの現実世界とあまりにも違って、その乖離に愕然として。客席の私たちはまるで取り残されたようで。
怖かった。『パレード』の紙吹雪を見た時みたいに恐ろしかった。
やっぱり初日よりモリーナとバレンティンの遣り取りが濃くなってたのかな。たぶん会話のテンポも良くなってたり、とても自然になってた。
ほぼどセンで観れたのも良かったのかもね。初日には見えなかったもの…シーンの意味とかがいろいろ見えた気がする。
今日は、会話の流れ・人物の心の変化・シーンの繋がり・歌シーンの世界の展開、すべてが唐突ではなくスムーズに、説得力あるものに感じられた。
蜘蛛女が常に傍にいること、紗幕の後ろで操っていること、姿を見せるタイミングもいちいち納得できたよ。
幹二さんのモリーナの造形もより自然になってたんじゃないかな。変に"女っぽさ"を作ってない、断然素敵なモリーナになってた。「彼女は女でラッキーね」と歌うのはバレンティンに惚れたからだったんだね。
良大くん歌いいじゃん!ファルセットも綺麗だし。♪Dear One の入りがすごく素敵だったなー!
あ、でも革命の歌の最初の部分とかは音程取るので精一杯な感じがしちゃったかな。曲が難しいんだけどさ。幹二さんや瞳子さんみたいに聴かせてもらえたら嬉しいんだけどね!(ハードルが高いw)
芝居と歌が良く融合してるのは素晴らしい。
役が沁み込んでる感じする。
感情の運びもちゃんと見えて良い。
モリーナを毛嫌いしてたところから、彼女が「私は人間のクズです」と言わされてるとこでギアが変わったよね。
とても楽しそうに巻き込んでくるモリーナについつい乗せられて映画に惹かれていっちゃう感じは相変わらずいいよね(良大くんもエンタメ映画好きだもんなー)。
2幕はじめ(鳥の楽園の楽しい余韻からのDear Oneの優しいメロディに導かれて始まるんだよね)ピクニックの時にはもうすっかりモリーナの世界・映画の世界に魅了されてて楽しい気持ち・明るく穏やかな表情になってるバレンティンだけど、エンタメに逃げる姿勢にふと自分で気づき振り払って立ち返ろうとするのよね。そして現実を変えようとしなければ!ってモリーナに説いたりする。
リーダーとかではない小物だし、革命に燃えることと小さな幸せを得て満足することとの間で揺れてるんだよバレンティン。そんなふうに見える良大くんの造形。
楽しい気持ちでワインを飲んでいたところから、モリーナが釈放されると聞き、穏やかな顔のままでおめでとうと言い、寂しくなるよと真顔で言い、ふざけた冗談に笑いながらふたりの日々を思い出し、もう境界線は要らないと言い、頼み事を試み、でも無理強いはせず、でも「あいつは俺のためならなんだってやる」なんて歌い、「したいから」と言って彼女を抱く。そして翌朝「もう二度と自分を蔑まないと約束してくれ」なんて言って、キス。で、結局頼み事を聞いてもらい、「頼むぞモリーナ!男になれ!」なんて言って見送る。…もうさ、支離滅裂だよね。ずっと二面性が内在してる。そういうしょーもない男なんだよな。
「お前の同志は本当に命を捧げるほどの価値があるのか?」「お前ひとりが信念を貫いたところで世界は変わるのか?」と所長に言われたのは痛かった。そこで、虚しく夢に縋っているのはモリーナも自分も同じだと完全に気づき、命を投げ出そうとしているモリーナに向かって「俺はそんな価値のある男じゃない!」なんて叫ぶ。最期に聴いたバレンティンの言葉がそれだなんて、モリーナあまりにも惨めだ。
瞳子さんはまた一段と凄いことになってた。蜘蛛女の時もオーロラの時もオーラすげぇ。凄い支配力。
蜘蛛女の歌い終わりの余韻(かすれる息のような)が素敵!と思ってたらアフトで触れてくれて嬉しかった。公演を重ねながら工夫・変化してるんだって。
脱獄囚が壁で撃ち殺される時に蜘蛛女の螺旋階段がヌウーッと現れるのいいね。あれはキスしたのではなく糸で絡めとってたな。
なんたって圧巻のナンバーは「蜘蛛女のキス」だけど、モリーナとバレンティンがベッドに倒れ込んで暗転した後にジャジャーンと登場する瞳子さん、階段の途中に気怠く斜めにダラリ寝転んでる姿勢たまんねぇ。歌のラスト、手から背後に網が広がっていったの見えたわマジで!!
そうそう、鳥の楽園の歌で手拍子が起こったのは今日が初めてだったんだって。わたし最初はエッと思ったけど、曲中バレンティンの変化を見てたら自然に私もそんな気になって途中から手拍子したよ!
あ、アンサンブルで1曲目からダンスの綺麗さに目を惹かれてしまった方がいたのでパンフで確認。橋田康くんだな!
台詞・歌詞で「おっ」と思ったとこもいくつかあった。
「感情って嫌ね。めんどくさい。何とか生きるだけで充分めんどくさいのに」「感情があるからクソどもに立ち向かえるんじゃないか」とか。
Dear One の歌詞、嘘を言い続けるんだ…そのうちそれが真実になるから…って現状への諦めを歌ってるの?切ないね。あんな美しいメロディなのに。
そしたら、そっか、Viva la guerra!Viva la revolution!も嘘だよね、きっと。
本心・本質を包み隠して生きること。バレンティンは「男になれ!」という言葉でモリーナにそれを強要することになってしまった。バレンティンにとってこれは"佳きものになれ"という意味だったんだよな。
"男の要素/女の要素"みたいな区分けを取っ払うことは、当時の彼らには考えも及ばないことだった。
そう言えば、所長とバレンティンがモリーナについて「わかってる」と連発して言ったとこもエグかったな(スタイリストの友達も言ってた)。モリーナ、一度だけ(電話できるできないで揉めたとこだ)バレンティンに「わかりっこない!」って言ってたよな。
あと「幸せの素敵なとこって、もう二度と不幸になることなんてないって気がしちゃうとこよね」とか。モリーナをじっと見つめて「ならないかもしれないよ」なんて囁くバレンティンずるい。これも本心なのか打算なのか分からない。たぶん両方入ってるから分からないんだ。自分でもわかってないんだ。
あ、そう言えば、1幕最初の頃にモリーナが「あんたもクズじゃない!あんたとあたしの違いは、あたしは自分がクズだってわかってるけどあんたはわかってない」って言ってて…"わかる/わからない" というワードも結構出てきてるね。
あと、そうだ…「共産主義者って運命に見放された美女を利用するわよね。看守ぅ〜この男があたしのスッカスカな頭に思想を詰め込もうとするの〜ファシズムってシンプルで素敵なのにうっかり忘れそうになっちゃう〜」ってコップをスプーンで叩きながら言ってたなぁ。
モリーナが危険な任務を請け負い死さえ選んでしまうのを"バレンティンへの愛のため"とかおざなりな言葉で言うのは陳腐で嫌だな。
バレンティンが教えてくれた「自己を貶めないこと」「現実逃避に甘んじないこと」「現実を変えるための行動をとること」を実践してみようと思ったんだ。あの人が言った「男になれ!」が意味することはそれだから、「男になろう」って思ったんだ。あたしが今まで出来なかったことだから。
「任務遂行しました」って敬礼なんてしながら死んでいったねモリーナ。あなたに会ってあたし変わったのよ!って、"誇らしく"している姿をバレンティンに見てもらいたかったんだよね。なのに、最期にもらった言葉が「おれはそんな価値のある男じゃない!」だなんてさ…😭
ノーチェックだったんだけどアフトがありまして😅
日澤さん・幹二さん・瞳子さん、めっちゃ喋れる3人で面白いトークだった♪
バレンティンの話をたくさんしてくれて嬉しかったな♡二人の遣り取りが進化してますよね!いやー面白いですよと日澤さんも感心してた。モリーナとバレンティンはすごく影響し合うから、ばっちと良大くんで全然違う球を投げてくるので全然違うピンポンになるって幹二さん。ばっちは最初もっと距離を取ってるって幹二さん言ってたし、もっと孤高に見えたりするのかな。楽しみだ。
バレンティンにキスされて(抱かれた時にはキスはされてなかった!)、モリーナは崩れてしまったんだって。そうなのか😢
日澤さんはミュ初演出ということで、音楽によって一気に持っていける利点を感じた一方で、何故ここで音楽?と思う箇所もあったらしく、Dear Oneの歌に入っていく流れには説得力を持たせるのに苦心したって。バレンティンの歌い出しを寝入り端みたいな演出にして、モリーナとバレンティンそれぞれの夢の中みたいにしたと。うんうん、そう理解してたよ!そうか、脚本からは二人が互いに話したように見えるかもしれないのかな。